七五三

七五三（しちごさん）は、3歳、5歳、7歳の子どもを対象にした日本の伝統行事で、子どもの命と成長を祝う特別な日です。平安時代に貴族社会で始まったとされるこの行事は、やがて江戸時代には武家や庶民に広まり、今も大切に受け継がれています。七五三の年齢は、かつて幼少期の病気や事故が多かった時代において、子どもが無事に成長したことを感謝し、これからの健康と安全を祈る節目として特別に意識されてきました。

七五三は、単なる年齢の区切りとしての行事ではなく、子どもの「命」を祝う重要な意味が込められています。現代の日本では、医療や生活環境が整い、子どもたちが健康に育つことが一般的ですが、かつては病気や栄養不足で命を落とすことが珍しくありませんでした。そのため、子どもが健康に成長することは、家族や地域にとっても大きな喜びであり、特別な儀式を通じて命の大切さを噛み締める機会として祝われてきました。

3歳：「髪置きの儀」
3歳は男女ともにお祝いする年齢で、これは「髪置きの儀」に由来します。平安時代には3歳まで子どもの髪を剃る習慣があり、3歳から初めて髪を伸ばすことで、成長と健康を願いました。髪は命の象徴とされ、丈夫に育つことを願う意味が込められています。

5歳：「袴着の儀」
5歳は男の子が対象となり、「袴着の儀」を行います。男の子が初めて袴を着用することで、大人への一歩を踏み出すと同時に、健康で丈夫に育つことを祈ります。袴は力強さや勇気の象徴であり、成長したことを誇りに思う心を育むための儀式です。

7歳：「帯解きの儀」
7歳は女の子が対象で、「帯解きの儀」が行われます。女の子がそれまで使っていた紐の代わりに、初めて帯を締めるようになり、成長と成熟の節目として祝われます。この儀式を通じて、親や家族が女の子の成長を認め、未来への希望と命の尊さを願います。

七五三の祝い方は地域や家族によって様々ですが、一般的な流れとしては以下のような手順で行われます。

1. 神社での参拝
　まず、地元の神社や寺院に参拝し、子どもの健康と無事な成長を祈願します。神主から祝詞をあげてもらい、お祓いを受けることで、これからの命と安全が守られるよう祈ります。子どもが晴れ着を着て神社に参拝する姿は、家族にとっても大切な思い出です。

2. 写真撮影
　七五三は家族の大切な記念日として、多くの家庭が写真撮影を行います。伝統的な着物姿や袴姿を写真に収め、成長の瞬間を形に残します。近年では写真館での撮影を先に済ませ、後日ゆっくりと参拝をする家庭も増えています。また、家族での撮影も多く、祖父母を交えた三世代での写真は、家族全員で命を祝い、命を受け継ぐ絆を象徴するものとして貴重なものです。

3. 千歳飴
　七五三では「千歳飴」を持たせる風習があります。千歳飴は細長い紅白の飴で、長寿を願う象徴として親しまれています。また、千歳飴が入れられる袋には、鶴亀や松竹梅といった縁起物が描かれており、子どもの命と未来への願いが込められています。

4. 家族の食事会
　参拝や写真撮影を終えた後には、家族や親せきとともに食事会を開くことも多いです。食事会では、子どもの好きな料理を用意し、命の祝福を分かち合います。また、お祝いの品やお小遣いが贈られることもあり、子どもにとっても特別な一日として記憶に残るでしょう。

七五三は子どもの命を祝うだけでなく、家族全員が命を繋ぐ「絆」を確認し、感謝を表す場でもあります。命のバトンは、親から子、さらにその子どもへと続いていくものです。この日を通じて、親は改めて子どもの存在に感謝し、家族全員で健康と幸せを祈ることが大切です。特に、祖父母が参加することで、命が世代を超えて受け継がれていることを実感する機会になります。
また、七五三は子どもが自分の命の大切さや、家族の支えを感じる日でもあります。自分が祝福され、大切にされていることを実感することで、自信と誇りを持って成長していくことができます。

現代における七五三は、単なる形式的な行事ではなく、家族の絆を深め、命の大切さを改めて確認する場としての意味が強くなっています。忙しい日常の中で、家族が一堂に会し、子どもの命を祝い、感謝する時間は貴重です。また、子どもにとっても、命が尊いものであり、自分が家族にとって特別な存在であることを感じる機会となります。

七五三は、日本の伝統行事でありながら、現代でも命の尊さを祝う重要な儀式として受け継がれています。家族全員で子どもの命と健康を祈り、未来への希望を込めて祝うこの行事は、家族にとっても子どもにとっても特別な日です。親から子へと受け継がれる命のバトンを感じながら、家族の絆を深め、感謝の気持ちを持って過ごす七五三は、これからも多くの家庭で大切にされ続けるでしょう。